ぐーたら親父の言いたい放題

日々の様々なニュースを取り上げて、独自の視点でコメントします。これからの社会の変化を予測し、どのように対処すべきか提案できればと考えています。

非正規労働者に冷たい風

 厚生労働省の2019年国民生活基礎調査によると、2019年の世帯所得の中央値は437万円、平均値は552万3000円となっている。高齢者世帯や単身世帯を含めて「300万円~400万円未満」世帯は12.8%、「200万円~300万円未満」世帯は13.6%、「100万円~200万円未満」世帯が12.6%いる。つまり、年収400万円未満の世帯が39%を占めているのが日本の現状である。

 

 同一労働同一賃金を掲げて動き始めた働き方改革だが、日本の4割が占める低所得者層に光明をもたらすような判決が期待されながら、経営者側の論理に沿った形で一昨日出された最高裁判所の判決は、正規社員の権利としてある賞与や退職金を、非正規社員には保証しなくてもよいという結論になってしまった。正規社員と非正規社員の待遇格差は不合理ではないという論旨であった。しかるに原告側が訴えた、同一職種でほぼ同等の業務を担っていながら、賞与や退職金の不支給が大いなる格差として存在するという主張は退けられた。

 

  日本国民は裕福であるという評価は、今や幻想になりつつある。ダブルワークをすることで、なんとか最低限の生活レベルを維持している人も多い。晩婚化は、結婚に踏み切れるだけの収入を確保できないが故と考えても何ら不思議ではない。ましてや子どもを生んでも育てられない、あるいは責任をもって育てられないがゆえに、出生数減少に歯止めがかからない。日本人の国民所得が上昇しなくなり、非正規社員が賃金労働者の4割を超えて、2000万人以上となっている。その人たちの正規社員との待遇格差が不平等であるという主張が認められなかった。

 

 これでは、経済格差は縮小しない。それどころか逆に企業経営者はこれ幸いと、賃金を抑制する方向に走る。15日にでた日本郵便契約社員らの訴えはすべて認められた点は進歩であったが、賃金総額を増やしたくない企業は、非正規社員に手当てを払うために正社員の手当てを減らしたり、逆に正社員の待遇を維持するために、手当の原資を賞与に組み替える可能性が高くなりそうである。非正規社員の待遇を改善する一方で、正規社員の労働条件を下げない、そんな努力ができるのは労働組合だけであるが、そういった意味では日本では労働組合の弱体化が進んでいるのが気にかかる。

 

 経済を活性化するためには消費需要を伸ばすのが最適な選択であるが、可処分所得が増えるどころか、全く増えない中で貧困家庭が増加している現象を取り除く努力が行われていないことが問題である。官僚の人事権だけでなく、司法における人事権も行政に掌握されつつあることに危惧を感じる。三権分立がどんどん形骸化することが、民主主義にとって、いなこれからの国民の生活にどのような影響をもたらすのか、もう少し考えを巡らせる努力が、国民一人一人によって行われなければならないのではなかろうか