ぐーたら親父の言いたい放題

日々の様々なニュースを取り上げて、独自の視点でコメントします。これからの社会の変化を予測し、どのように対処すべきか提案できればと考えています。

失業者が増えることが懸念される

 バブル崩壊以後30年余りの間、日本企業は労働者の雇用形態として正規雇用を減らし、批正雇用を「増やした雇用構造の変換があった。例えば、日経平均株価終値ベースの史上最高値(3万8915円)を付けた1989年に着目してみよう。非正規雇用のデータで残っているのは、株価が高値を付けた12月末ではなく、2月末のものになるが、この時の非正規雇用数は、817万人で、全体の19.1%だった。これが、ちょうど30年後の2019年2月には2165万人で、全体の31.2%に膨らんだ。さらに、2019年9月には2202万人の31.9%とピークを記録。そして、米中貿易戦争と消費増税の2つが原因で景気の減速が鮮明になってきた2020年1月には早くも2149万人に減り、全体の31.1%に縮小した。

 これだけ非正規雇用が増えると、不況期の「派遣切り」「雇い止めと呼ばれるような解雇の続出が心配になる。終身雇用・長期雇用を前提としていた昭和期後半の正規雇用社員と違い、今の企業経営は、非正規雇用の従業員を容易にカットできるコストの調整弁のひとつと考えている。リーマンショックの影響により派遣切りが続出したことに対応、複数のNPO労働組合が組織した実行委員会が、2008年12月31日から2009年1月5日までの6日間、東京・千代田の日比谷公園に設置した仮設の避難所「年越し派遣村」というのを覚えているだろうか。あの「年越し派遣村」ができた2008年でさえ、非正規雇用者数は1765万人で、まだ全体の25.9%に過ぎなかった。その後、非正規労働者数は去年9月のピークに、さらに437万人も増えたのである。ちょっと経営が苦しくなったら、大量の解雇が出て巷に失業者があふれかねない、そんな経済構造が日本には定着してしまった。リーマンショック時、日経平均株価は1年9カ月で61.3%下落した。一方、失業率は3.6%から5.5%に2年で53%上昇。20人に1人が失業した時代と言える。 

 もう少し時代をさかのぼると、日本にとっての歴史的な転換点となったバブル経済の崩壊がある。日経平均株価は、1989年末の最高値(3万8915円)から、実に12年4ヵ月をかけて80.5%下落するという記録を残した。2003年4月に付けた底値は7607円だった。そして、失業率は1989年末の2.1%から2003年4月の5.5%へと2.6倍に膨らんだ。さらには第二次世界大戦前ではあるが、1929年にアメリカで勃発した大恐慌がある。株価は1929年9月から1932年7月までの2年10カ月間で、ニューヨーク・ダウが高値381ドルから底値41ドルに89%も下落。極め付きが失業率で、1929年12月の3.2%(失業者155万人)から1933年12月の24.9%(同1283万人)へと、4年で7.8倍に急膨張した。大恐慌の最大の原因が農業や製造業の供給力過剰で、労働者の解雇を軸にした生産調整の結果、当初失業者は33人に1人だけだったのに、あっという間に、4人に1人が失業者という時代になったのである。

 仮に、今回の新型コロナ危機で、リーマンショック時と同様の364万人の失業者に加えて、昨年のピークまでに増えた非正規労働者437万人が解雇されるとすれば、それだけで失業率は11.6%と日本の過去最高水準の2倍を大きく超えてしまう。まさかと思うが、非正規雇用者の半分が解雇されれば、失業率は15.8%に、すべての非正規雇用者が解雇されれば、失業率は31.5%に跳ねあがる。こう見てくれば、今回の新型コロナ危機では、「大量失業」を想定した失業対策が必要なことが明らかだろう。 

 グローバル化の時流を完全にストップさせてしまう、新型コロナウイルスの感染拡大は人の往来をほぼ止めてしまい、東京オリンピックの延期も決定された。日本の観光地や都市部の宿泊施設はキャンセルに次ぐキャンセルで瀕死の状態であり、観光バス業界も閑古鳥が鳴いている。休業や雇い止めが、どんどん起こる可能性がある。安部首相の一斉休校要請による給食パン製造の会社の倒産もあった。これからしばらくは、経営危機や失業のニュースが飛び交うことが予測される。 

  新型コロナ感染拡大は、人手不足の時代に終焉を告げ、巷に失業者が溢れて激減した雇用が増えない時代の始まりを告げる歴史的な節目になる可能性がある。これから進行すると見られていた第4次産業革命、もしくはデジタル革命が加速し、企業は解雇で圧縮した人員を戻すよりも、AIやロボット、ITなどへの投資に資金を充当するようになると考えられるからである。すでに、新型コロナ危機で外出がままならない中で、EC(電子商取引)が急増しており、アマゾンドットコムがアメリカで10万人を雇用すると発表したのは、そうした新たな流れの先駆けかもしれない。

 眼前の人件費コストを削減することで、利益をひねり出す脆弱な経営体質を強化するためには、それこそ人材を大切にし育成を怠ることなく、社員もまた消費者であることを忘れずに十分な可処分所得を賃金とすることで末永く継続できる事業を継続していくことが大切だということを、こんな時期だからこそ思い起こす必要がある。