ぐーたら親父の言いたい放題

日々の様々なニュースを取り上げて、独自の視点でコメントします。これからの社会の変化を予測し、どのように対処すべきか提案できればと考えています。

英国がEU離脱する日

 二度の世界大戦を経て、欧州に戦禍を再びもたらさないとの誓いから6か国が集まって始まった共同体、いまや旧共産圏を含めて28か国まで広がったEU(欧州連合)からはじめて英国が離脱することになった。マルタ会談ののちのソ連の消滅以後のグローバル化の進展もあり、欧州のほとんどを網羅する形で、とりあえずは経済的にはまとまった。しかし、共通通貨ユーロや、国境審査なしの出入国を認める「シュンゲン協定」などでは足並みがそろわなかったものの、欧州の経済成長が自国の経済的利益につながるという思いから加盟国が増え、欧州連合は拡大を続けてきたのである。

 

 それが、EUの拡大にともなって、各国の法制度や規格の統一化が進むにつれ、そして世界的な経済的発展が鈍化し始めたことを受けたこともあり、どんどん英国内だけでなくEU各国において不満を抱える国民が増えているのが現状である。域内では関税をかけず、人やモノの移動が自由なのであるが、その結果制度や規格をそろえることが不可欠になり、たとえば野菜や果物の規格を厳格化したり、輸入・製造できる掃除機の出力を制限したりする規制まで行われるようになった。しかも少しでも高い賃金がもらえる職を求めて移民が押し寄せ、その国内の人々から職を奪うようになったことや、社会保障への不安感が増えたこともあり、英国においては国民投票でEU離脱を選択することになったのである。

 

 しかしフランスやドイツにおいてもEUに対する不満を持つ政党が勢力を伸ばしており、スペインやイタリア、ギリシアなどでは若者の失業率が高止まりを見せており、各国でEUに対する反対派は一定の支持を獲得し始めている。それはEUの存在意義を揺さぶるところまで来ているのではなかろうか。自国第一主義を唱える米国のトランプ大統領が誕生してからは、アメリカとも関係が悪化し始めている。欧州共同体が大切にしてきた多国間協議や自由主義経済などの価値観が揺らぎ、強大な経済力を持つに至った中国との距離感でもEU各国で温度差がある。クリミア併合を強行したロシアに対してもやはり関係改善の糸口は見えない。

 

 欧州統合を掲げながら、英国の離脱は逆行とも受けとめられかねないが、EUはlここからどこへ進むのであろうか。今回の英国のEU離脱に対して、前EU首脳会議常任委員長トゥスク氏は、自由と民主主義の危機であり、ナショナリストとポピュリストを勢いづかせることになると危機感をもっていると発言している。そう、利他主義よりは利己主義におちいり、自国第一主義に各国がなびいていくならば、光明は先に見出すことはできないだろう。我も我もと自らの利益に固執するようになれば、残念ながら、新たに生み出されるものはない。人類の叡智は、そこには生まれないのである。