米国大統領選挙は、世相を映し出す
今週に入ってから、経済の好調を示していたニューヨークダウや日経平均が大きく値下がりを続けている。新型コロナウイルスの感染拡大がバンデミックの様相を帯びてきたがゆえに、好景気にブレーキをかけたという風にとらえられているが、実際はそうではない。失業率は低く、株価は上がり続けた。米国も日本もそれだけのことである。現実の経済統計は少しも良くなっていないし、実質賃金も上昇しているわけではない。ただただ人手不足であり、株価だけが上昇しているに過ぎないのである。
民主党の大統領候補の指名争いは候補者の乱立でし烈になっている。その混戦から抜け出そうとしているのが、78歳のバーニー・サンダース候補である。富裕税や金融取引課税を強化して税収を確保して、学生ローンの免除を主張するサンダース氏は、多額のローン返済を抱えて苦悩する若者たちの希望の星になりつつある。ローンを抱える人は全米で5000万人。大きな票田である。アイオワ・ニューハンプシャー州に続き、ネバダでもその存在を示したサンダース氏は、一気に民主党指名争いの一番手に躍り出た感がある。サンダース氏は、さらに国民皆保険や労働者保護の政策を訴えている。高齢が今や唯一の弱点といえるほどに、人気を集め始めている。
その一方で若さを武器に、同性愛者であることを公言しているビート・ブダジェッジ氏が多様性の尊重と国民の団結を訴えて健闘している。女性候補者では、サンダース氏に近い経済格差是正を訴えるエリザベス・ウォーレン氏や、中道派のエイミー・クロンプシャー氏も頑張っている。多様な候補者が乱立しているのは、政治に新風が吹き込もうとしているのだが、なかなかそれがゆえにスムーズに一本化されていくかどうかは不透明である。
しかしそれにもかかわらず、トランプ大統領に伍する候補者としてサンダーズ氏が台頭している状況に、現在のアメリカの苦悩があるような気がしてならない。ネバダ州で高支持率を得たサンダース氏は、この勢いをかって来週にせまったスーパーチューズデイでの勝利を確実にして、指名争いで完全に主導権を握るかもしれない。今年の大統領選挙は、そこにこそ焦点があてられるべきなのかもしれない。